まちづくりフォーラムinたんば


場所:篠山市民センター 多目的ホール
日時:平成16年12月5日 午後1時20分から
主催:丹波地域ビジョン委員会「自分たちで決める仕組み分科会」
NPO法人たんばぐみ
参加者数:122人
司会:西垣健太郎

フォーラムの議事録

● 趣旨説明【酒井扶美 座長】
みなさんには大変ご多忙の中、多数お集まりいただきましてありがとうございます。
本日は、(平成15年11月に開催しました緑条例フォーラムを踏まえ)丹波地域ビジョン委員会
「丹波のことは自分たちで決める仕組み分科会」とNPO法人たんばぐみが共催で、まちづくりフォーラムを開催させていただきます。
先進的に住民主体のまち興し、村おこしに取り組んでおられる集落の方々の実践報告と、
書類には書けない裏話や本当に大変だった事などを発表して頂きます。
その後、全てを行政に任せるのではなく、住民自ら行動をおこして自分たちがそれぞれ住み良いまちにするうえで、
自分たちに与えられた役割というものを理解するために、篠山市と丹波市から2地区ずつ参加していただき、
事例発表とパネルディスカッションを行います。そしてフロア参加者には、このフォーラムで気付いた事等をみなさんの
地域の活動に取り入れて進めていっていただければ嬉しく思います。

● 事例発表

・ 乗竹地区 (西尾 右さん)

乗竹は多紀連山の西北部に位置している。平成15年に西紀トンネルが完成し、乗竹地区は一新された。
乗竹とは、人口が140人で33戸の集落である。乗竹には乗り上手な人が多く、40代半ばの方々も郷づくりの話に乗ってくれ、
住民が一丸となりこの郷づくり計画は始まった。
郷づくり計画や、事業計画など、随分この計画の趣旨を理解することに時間がかかったが、幸い、丹波の森協会の専門委員の
上岡典子さんに非常に柔らかい視点のアドバイスをいただき、計画を進めることができた。そんな事もあり、完成した計画書の中身は
私の思っていた以上のものになったと思っている。
計画づくりについては、協議会の土地利用部会と景観環境部会と生涯学習部会の3つの部会を設置し、この3つの部会を縦糸とし、
郷づくり計画に関心のある人がいつでも参加できる、出入り自由のワーキンググループで土曜サロンを実施した。これが、
横糸の役割を果たした。また、どのようにこの郷づくり計画が進んでいるかという事を、
地域のみなさんに知ってもらうためのかわら版を作った。毎月、A3版、両面カラーで印刷し配っている。情報公開は大事と思っている。


・野間地区(安井 均さん)

野間の里づくり活動を、篠山市緑豊かな里づくり条例に添った活動として農地の保全と高齢化対策等を包括した
集落の計画として策定した。緑豊かな環境と農地の保全と共に、土地利用計画を重点的に考えたい、
又地域の活性化と高齢化解消等の問題を様々な角度から考えている。
平成14年8月に「集落経営部」「生活空間部」「コミュニティ部」の3部会を設立の後、
平成15年12月には野間里づくり協議会を設立し、
計画策定に入り、平成16年3月に里づくり計画案の縦覧公告を行った。
里づくり計画の推進は集落全員113名の賛同を得て推進している。

(安井市郎さん)
野間地区では、最近、農業利潤が非常に悪くなり小規模農家が困っているため、
小規模農家が集まって農地の保全を図ろうと、互助を目的とした農事組合を設立させた。
この農事組合の目玉の事業部である生産部は育苗等の活動をしている。今年からは
農協の苗を受託し、6千枚の苗を作った。
野間地区の高齢化率は40%前後になっていることから、農業の後継者が少なくなり、特に小規模農家には稲作を
する人がいないことを受けて、事業部は都市交流を推進する為、まず初めに、阪急岡本駅の近くで、
「野間の里」という丹波の朝市を試作的に行っている。
また、都市住民に野間の里に来ていただき、農作業の体験を通して交流している。
ほかに、野間でも山田錦を作り「野間」という銘柄でお酒を出そうとしている。
花いっぱい事業の活動、パソコン塾の開設、森と川の森公園の事業、里山公園イベントやお花見会の開催、
広報誌の発行なども行っている。

・東芦田地区(長井克己さん)

東芦田地区は青垣町の東の玄関口にあたり、人口が約800人、戸数が約200戸の大きな集落である。
私達のテーマは、農村の環境保全である。
このメンバーには、幸い、市の職員や、自然系学習施設の職員、県立人と自然の博物館の職員等も参加している。
そういう人たちがビオトープの観察場所、小鳥や蝶やメダカを呼び込むための方策やら知恵も出し合った。
維持が困難になって取り壊しの話も出ていた民家に明かりをあてる「灯り展」も行った。
この灯り展を企画するのにも色々な手法と役割分担を行った。
ただ、ロウソクをともすだけではなく、奈良の吉野から行燈づくりスタッフを呼び、プロのカメラマンに記録もお願いした。
また、チラシによる情報発信も行い私たち自身も楽しんだ。
こういった活動を通して、できるだけ今の農村風景を壊さないようにしようという雰囲気も強まってきている。
環境というのは対話だと思う。時とともに、歴史、文化、環境は変化する。そういう中で私たちは変わっていくものと対話を
していくというのが一つのプロセスだろうと思う。当然、人との対話もプロセスだと思う。
私達は行政からの助成は当初から考えていない。自分たちで出来ることは自分たちでしたいというのが、根底にある。
私達は、まずは地元を知ろうという事で、「見っけ隊」を編成して、集落内の神社や、峠、村おこしグループの活動を見て歩いた。
それらをまとめた集落のホームページを立ち上げる。
現在、多くの方が疑問とされているように、都市との交流については、10年、20年程前は私たちはお迎えをする為に労を
費やすという状況があったが、今では、ホスト役としてなにもかもお膳立てをしていく事が本当に交流と言えるのかと疑問に
思ってきている。

・多田地区【地上の星 上演】

 区民のまちづくりに取り組む熱意を表現した踊り「多田区プロジェクトX 地上の星」の上演による自薦活動報告が行われた。


● 休憩

● パネルディスカッション

(コーディネーター 横山宜致)
パネルディスカッションの進行役を務めます、たんばぐみ「まちの景観部会」の横山と申します。去年の緑条例フォーラムの2回目という事で、
昨年に引き続き本日のフォーラムを企画しました。昨年は、緑条例をまず知って頂こうと緑条例よりも先行する形で始まっていた篠山市
緑豊かな里づくり条例に基づいて計画策定していた、日置地区と、過疎の非常に大きな問題を抱えている川阪地区、丹波市では唯一
積極的に中瀬先生をアドバイザーとして呼ばれて取り組んでいる国領地区が、パネルディスカッションで、独自の活動を発表した。
今年は、すでに緑条例に基づいて計画を策定している乗竹地区、野間地区、計画を策定中の東芦田地区、多田地区の方々に、
出席頂き、タイトルにもあるが、本音で語り合って頂こうと思う。

(乗竹地区 真庭紀之)
乗竹地区の道が綺麗になり、部落がだんだん様変わりし、バラバラに開発されるといけないなので、
土地利用を計画的に行うため、郷づくり計画を策定した。
緑条例を策定すると言うのはこれまでの建前である。3つに分かれている隣保毎に毎年、行事を行ったりと
まとまりがつかない状況が時にはある。そこで、この際出来れば、30戸程度なので部落を一本化したい。
しかし、その背景には後継者不足、若者達の都会流出がある。それを防ぐ為にも、
今回の郷づくり計画に乗り、それらを上手く解消していく方法があるのではないかと言う事がある。
それから、「みんなでおいしいお酒を飲めたらいいな」と言う思いから、土曜サロンと言う構想に繋がって来た。
それに、世代間を埋めて行くのに、現在は60代が元気で50代40代が前に出て来られないと言う。
その辺をうまく埋め合わせるにはどうしたらいいのかと言うのがあり、
みんなで力を出し合う事を通じて出る場所を作り出せれば良い。そう言うものが複合した郷づくり計画が作られたと私は思う。

(野間地区 安井 均)
 野間地区では、特に高齢化の一つの問題は、核家族と言う事が大きな原因になっている。
みんな一緒に暮らす事が必要である。自分の事ばかり考えずに、地域の事をまず考えて、それにみんなが参加する。
参画と協働と言う事はそう言う事ではないかと思う。

(多田地区 豊田義孝)
 多田の場合は整備計画にかかる前に平成14年4月の総会で多田区の総合振興計画を策定している。
1年ほどかけて規約変更委員会が携わった訳だが、その振興計画を立てるにあたって、
自主財源を多く持っていないのでどうしようかと言う問題があった。結局は、振興計画を立てて、
区民の方に沢山の資金を貸して頂いた。10年先を見通した計画作りに着手した。
一方、振興計画の中に早速平成15年夏にはボランティア会が発足出来、整備に取り組んでいる。
振興計画の策定と、地域の区民の皆様が動くと言う中で、この整備計画策定の話が平成15年の秋に入って来た。
我々は整備計画を策定し、開発を規制すると言う事が土地利用の難しい
問題ばかりが気になって、大変な作業で我々の出来る事ではないと思った。しかし、町や県の職員にご協力頂き、
この整備計画を立てる事は多田の今後の将来像、指針を作って行こうと言う事であり、丹波市に移行する時であるので、
多田の住民がいきいきしている所をアピールしたいと言う思いに
変わった。

(東芦田地区 長井克己)
 私達のグループ(江古花園)は、東芦田地区のごく一部の者が実際大きく広げて行こうとしている。
東芦田地区は旧青垣町の中でも、村おこしを早くから手掛けて来た。置き換えれば行政はそういう部分は助かって来たと思う。
他の3集落も同じだと思うが、住民自ら立ち上げた
村おこしが進んでいる。15,6年ほど前に「ごりんかん」が40名ほど集まって、一人30万円ずつ負担して施設を作る等の活動をしてきた。
都市との交流から地域が活性化したと言う歴史の中から7つ目の村おこしのグループが江古花園である。7つある村おこしグループは、
個々に活動しているので、東芦田村おこし協議会を設け、地区内のネットワークを組んでいる。
村の中で集まりも会話も少ないのが実情で村おこしグループがそれぞれにイベントを起こして集まりと会話を促進していく狙いもある。

(乗竹地区 長澤清)
 乗竹地区では、若竹の泉が現在、完成している。乗竹の里づくり協議会は住民の皆様のご協力により、6月に完成している。
近年は、交通の便が良くなり、都市部からの若い人達と共に地域の交流を図っている。地区内のかわら版には、地元の情報や
家族の紹介から、協議会の取り組み等を掲載している。若竹の泉には、地元の若い男性が積極的に参加し、その他、若い人達が
参加してくれて自分達の集落の魅力を再発見してくれているので、子供からお年寄りみんなのオアシスになるかと思っている。

(野間地区 安井市郎)
 野間地区は地理的に非常に恵まれているが、現在、野間地区は高齢化が非常に進んでいる。
若い人がほとんど都会に出てしまっている。村を守るためにはどうすればいいかと言う事で、
野間は住民によるまちづくりを進めている。
智頭町への視察等の準備に一年かかって、ほとんどの地区住民の了承を得て、里づくりを行おうと言う事になった。
若い人達が帰って来るお盆に納涼大会を開催し、若い人達に地元の魅力を感じ取ってもらえればいいと思う。200人位出るので、
最初は野間だけで行っていたが、地域の集落も一緒にと言う事で、4集落で行っている。何とか村で頑張って村を守ろうと言う意識を
持ってもらう事が大事である。

(野間地区 安井均)
 女性の方々の改革について言いますと、現在、専門的な人が33名いるが、その内11名の女性が専門的な事で動いている。
こう言う事で、動きも活発になるのではないかと思う。この様な改正をすると言う事が大切だと私は考える。

(東芦田地区 長井克己)
 計画よりも放棄田の回復という問題が東芦田地区全体に立ちはだかっている。このほどの台風で山林に被害が出た。
その一ヶ所を直すのでさえ推定4400万円と言う費用が見積もられている。その資金すら持ち合わせていないと言う状況にある。
このような課題を片づけてから整備して行かなければならない状況にある。

(多田地区 豊田義孝)
 たんばぐみの支援と言う事でアドバイザーに地区の会合に入って頂いたり、県民局のまちづくり課長や町の
企画財政課に入って頂いたが、やはり整備計画や緑条例が何かが分からない。緑を守り育てる事は分かるが、
規制等がかかっているかいないのか分からないと言う様な
問題があったので、私達は、ご指導を受けながら学習会を開くなどして緑条例がついてくるのは何故かと言うPRをさせて頂いた。
幸い4月3日に総会を開いて組織が出来、各区長、各組長、各組のメンバー、組合員等に必死で何らかの部会に入って頂きたいと
お願いした。部会は土地利用部会、緑化部会、景観部会、河川改修部会の4部会を構成し、各隣保から男性2名、
女性2名は必ず入るようお願いした。すると、約70名近くの策定委員が出来た。実際には6月から毎月1回部会が開かれている。
部会をして行き中間報告会をして百数部の冊子を作り全戸に配った。
4月以降の方向性は、どの様にしたら整備計画が上手く運用出来るかを論議し、整備計画にまとめ、
最後は2月に合意決議をして県に認定申請を
出したい。

質問、意見等 
(会場1)
 多田地区の方が、資金が無いと言われていた。それで、乗竹地区は酒を造られたそうだが、酒造りについて難しい所が有れば教えて頂きたい。

(乗竹地区)
 私達の子供の頃、おいしく良い水が出ていたと言う事から、「若竹の泉」を造る様になり、パワーアップ事業に出させて頂いた。
私達も軍資金が何とか欲しいので、この水を「おいしい水」として売れないか保健所に相談に行った所、設備に一千万以上
かかるだろうと言われて断念した。

(会場2)
 まちづくり活動を長く続ける秘訣はあるか。

(コーディネーター 横山宜致)
 参画と協働に対する温度差は人によってあると思うが、その時にかわら版の様なものが重要になってくる。
まちづくりが進行している事を地区の皆さんに情報開示する策定段階の取り組みとしては重要である。
特に若い人や、女性、パソコンに長けた人へ役割分担して行くと、大きな成果が得られるので
はないか。

(多田地区 豊田義孝)
 自分の周りの地方機関、事務局などにスタッフを必ず置き、そこから色々な情報発信や連絡ルートを作っておられ、
区長やリーダーが提言をする役割をさせて頂いているが、出来るだけ若い世代に仕事を振り、周りの人の力を十分に
引き出す事は一番大事だと思う。

(野間地区 安井市郎)
 若い人が中心になり取り組むのが一番良いと思うが、私の集落のように2人に1人は65才以上では、若い人も務めている事もあり、
なかなか難しい。女性も若者も一緒になり地域を良くして行こうと言う意識を持つ事が大事である。リーダーシップを取られる方に
そう言う所を突っ込んでもらう。

(コーディネーター 横山宜致)
 里づくり計画を行っている所と行っていない所の地域格差が広がる傾向が出て来るのではないか。ただ、計画書を作らないといけないと
硬く考えないで、地域独自のスパンで取り組む。地区独自の内容があり、そこから工夫が生まれて来る。
過疎化や高齢化が進んでいる所でも、上手く農地を保全する事で地域のマネージメントを作る事に取り組まれると成果が出る。

● 総括(中瀬 勲 専門委員)
 皆さんの話を「まちづくりの壁」を上手く通過されたと考えた。乗竹地区は人の集まるまちづくりで「まちづくりの壁」を通過した。
野間地区は地域全体のマネージメントである。地域全体で何とか行って行こうと考えながら、まちづくりの壁を崩された。
東芦田地区はプロセスプランニングでまちづくりをされた。そして、ボランティア活動でまちづくりの壁を崩した。
気付いた事は、皆さんが県庁や県民局の人に、「パワーアップや魅力づくりなどの助成制度は良い制度である」と
誉めたたえる活動をされている。
二つ目は、丹波のまちづくりはハッピーエンドになる様な楽しいドラマにして欲しい。三点目は、最近新しい法律が出来ているが、
去年の8月には、「国民の環境に関する精神の包容と環境教育の推進に関する法律」が出来た。
最近は緑の景観三法が出来た。緑景観三法は自分達の
美しい郷土を作る為に地域で組織を作り頑張って下さいと言う事を法律で位置付けをした。
緑条例の協議会は先行している。逆に緑を減らさないで もっと丹波が先行しなくてはならない。
そう言う意味では国の法律は全て丹波の緑条例を応援する感じになっていると思う。
それを逆に上手くテーマにして発信して頂きたい。四点目は、丹波の地域性をもっと発掘して、丹波から更に発信して頂き、
兵庫県だけでなく日本の緑が薄くなっている地域が更に活性となる様に、その最先端となり取り組んで頂きたい。

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