続 丹波包丁日記

〜松茸の土瓶蒸し〜


 

 

 

 


写真・文章

丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
お店「茶寮ひさご」店主 真鍋馨様ご提供

 

  秋本番になると、味覚の王様、松茸の登場となる。まだ暑さが残っている9月頃から店先や街道筋で売り出している値段の安い松茸は、当然のことだが丹波産ではない。多分、ほとんどが輸入物だろう。丹波産の松茸は出るのがもっと遅くて、最盛期は10月に入ってからだ。
  わざわざ「松茸」と断らなくても、丹波で「土瓶蒸し」といえば松茸のこと。間違っても椎茸やシメジのことではない。例えば、関東で「すき焼き」や「肉じゃが」といえば豚肉を使うが、関西では当然牛肉を使うようなものだ。土瓶蒸しは、丹波が発祥の地との説もあるくらいだから、関西人なら誰でも知っている。

  丹波の土瓶蒸しには、かしわ(地鶏)を使う。
今の土瓶蒸しは、色々と具を入れるのが普通だが、本来は、単純な取り合わせだったようで、具は、松茸とかしわだけで作るのが丹波流。実にシンプルだが、材料が良くないと土瓶蒸しの真価を味わうことが出来ない。

  昔は、松茸狩りに行くときは、かしわや葱に清酒や調味料を背負って、すき焼き鍋に七輪とヤカンを手にした重装備で松茸山を目指し、松茸が採れたら、現地でかしわと葱を入れてすき焼きにして食べた。ヤカンは山水を沸かすのと、酒の燗もするが、酒を飲み飽きた頃に、ヤカンに松茸とかしわを入れて吸い物代わりに作ったのではないだろうか。あるいは数奇者が、お茶を入れるのに持参した土瓶に材料を入れて、上から温めた山水を注いで醤油で味付けして食べたのかもしれない。松茸はいくらでも採れたので、ヤカンや土瓶の中の松茸は出し殻として食べなかったのかもしれない。
  実にもったいない話だが、土瓶蒸しの出しの味は、現在のレベルの何倍も濃かったに違いない。今この味を再現しようとすると、材料費だけでも大変な金額になる。経費がいくら掛かってもよいから作れという人がいれば喜んでお作りするが、私も是非にともご相伴に与りたいものだ。

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