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《文章・写真》 一級建築士 才本謙二先生

たんばに住もう・たんばで暮らそう

10 たかが建具。されど建具。

 

 

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 大学2年生の設計製図の課題で毎年、ドミトリー(集住体=学生寮)の設計を行っています。

 エスキースチェック中に、一人の学生から質問を受けました。「学生寮を完全個室にしプライバシーを確保して、自由気ままな学生生活を送ることが、学生にとって有意義なことか。学生時代には、より多くの人取り分け学生同士が係わり合いを持ち、社会性を身につけるのことが大事だと思う。寮を設計するに当たり、プライバシー確保は最小限度として、寮生同士のコミュニケーションを最優先にしたい。

 また、互いに気遣うことで社会性が生まれるのではないかと思う。」ということで、「そこで聞きたい。・・・」と質問が始まりました。「日本の民家は、三つ間取りや四つ間取りのように、襖または障子で仕切られている。どのようにプライバシーを確保してきたのか。」ということでした。

 共同生活を営もうとすると、お互いに我慢し気遣う必要があります。その内に自ずとルールが作られそれを守ることで、円滑な社会が形成されていると思います。家族間においても同じことで、昔は、襖を開ける前に「開けても良い?」とか「開けるよ。」とか声掛けして、了解を得てから襖を開けたものでした。襖には物理的な鍵が掛かっていませんが、声掛けという鍵が掛かっていて、決して簡単に開けられるものではなかったですよね。

 今は、声掛けでなくノックしてということになるのでしょうが、さすがに襖や障子では、ノックという訳にはいきません。日本の家屋にドアを多用し出したから、声掛けするという事を忘れた気がします。また、立ったままで開け閉めし、襖の向こうの人への気遣いなんて、全くありません。また基本的に襖や障子は、開放的で、ドアは閉鎖的というイメージがあります。

 ドアの閉鎖性は、心的状況にも影響して、家庭がどんどんcloseしてきたのではないかと昨今の事件を見ていると思います。ドアの生活に馴染んだ日本人は、自分の意の赴くまま、相手にお構いないなしで、気に入らなければいつまでも扉を閉じていて、他方では扉を有無も言わずに開けてしまいます。そういった感覚は、家庭内だけでなく地域においても同じだと思います。気遣うことなく、自分さえ良ければいいや的行動や姿勢が目立つように思います。

 高い塀で囲み、防犯システムで防御した家は、社会から見ると硬く閉ざした個室のドアと同じです。閉じることで、身を守れるかもしれませんが、心も閉じていませんかと聞きたくなります。隣を気遣い関係性を保つことが大事でしょう。たかが建具。されど建具。疎かには出来ませんね。

 

 

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