続 丹波包丁日記
〜 顔見世 〜


 

 

 

 


写真・文章

丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
お店「茶寮ひさご」店主 真鍋馨様ご提供

 

 今年も押し迫ってきた。いつもこの季節になると、南座の顔見世の話題で賑やかになる。今年の顔見世では、中村鴈冶郎が和事の名優、坂田藤十郎を襲名するというので京阪ではすごい盛り上がりようだ。今年は、先に江戸役者の中村勘三郎の襲名もあり、東西で二つの大きな襲名があったわけで、このところの歌舞伎の人気はうなぎのぼりともいえる。

 せっかくのおめでたい話に釘を刺すようだが、名優の鴈冶郎丈や勘三郎丈とはちがって、下手な役者を「大根」と呼ぶことがある。これは、大根は食べても中(あた)らない(中毒)。つまり、大根役者は芝居が大当たりしないので、そう呼ぶようになったらしい。

 もうかれこれ30年以上も顔見世を見ている私だが、昔の京都は今よりももっと寒くて底冷えがした。

 寒くなってくると美味くなるのが大根だ。京都では、顔見世の頃になると名物の聖護院大根が美味しくなってくる。寒いときに温かい食べ物がほしくなるのは道理である。
丹波は京都と隣りあわせで、土壌も似通っているらしいから美味しい大根が採れる。

 「風呂吹き大根」という料理があるが、これは、大根を軟らかく湯がいて練り味噌をかけたもの。茶懐石のような高級料理でも、寒いときの向付に大根の風呂吹きを出すことがあるが、これなどは器と材料を吟味すれば、大根でも立派な料理となる見本だ。ちなみに、風呂吹きの語源は、昔、漆を乾かす場所を風呂と呼んでいたのだが、あるとき大根を湯がいた汁を漆の製品にかけたところ、よく乾いたので、それが転じて大根の湯がいたものを風呂吹きと呼ぶようになったらしい。寒くなってくると、どうしても濃厚な食べ物を食べて活動が鈍る。そういうときに大根のような繊維質で消化のよい食べ物をとると身体にいいのではないだろうか。

 素朴な丹波焼の器に盛った風呂吹き大根も風情があっていいものだ。

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