正月の膳を飾る魚といえば、今では尾頭付きの鯛が一般的だ。以前は関西なら鯛か鰤、東から北なら鮭や鰤というように、どの地方でも地元と交易のある地域から魚が入っていた。
私の子供のころの正月といえば、男の子の私も三ヶ日だけは着物を着せてもらって、少々気恥ずかしい思いをしながら祝い膳を食べた思い出がある。毎年、床を飾る大きな「にらみ鯛」とは別に、家族銘々に尾頭付きの小鯛が一匹ずつ用意されるのだが、それ以外にも舞鶴の担ぎが持ってきる丹後の鰤を家で焼くか炊くなりしたものが食卓を彩る。私は初孫なので、祖父から大変かわいがってもらったようで、いつも祖父の膝の上に座って祖父の酒の肴のおすそ分けに預かったようである。当時は、実家が酒や飲料品店と仕出屋を兼ねた店をしていたので若狭や山陰の鰤や蟹などをよく食べていたが、本当は、残り物ばかりを食べさせられていたのかもしれない。
今では想像できないことだが、当時は背甲かに(松葉蟹の雌)が一匹10円くらいの値だった。冬の間は学校から帰ると、おやつ代わりに蟹をもらって、素手で蟹をかじって食べていた。
話は戻るが、正月三ヶ日を飾る「にらみ鯛」。関西では、西宮に本家本元の戒さんがあるので鯛はなじみが深く、天然とまではいかなくても、養殖でもせめて生を丁寧に焼いたものであればいいが、昨今は鯛と名ばかりの外国産の冷凍鯛を解凍して焼いた物が幅を効かす。これなどは、焼き立てならいざ知らず、焼き上げてから相当時間が経って、白目が窪んでかちんかちんになったお鯛さんは見るも無残である。こういうものは、金箸さえ入らぬ状態なので、食べようと思えば再加熱することになる。手っ取り早いのが、酒を振りかけてアルミホイルに包んで蒸し焼きにするか、姿ごと酒蒸しにして柚子かポン酢で食べるのが一番。
我が家でよくやるのが「鯛の土鍋ご飯」。焼いた小鯛なら2〜3合、大鯛なら一升の米を用いて大鍋で出しとともに炊き上げる。難しそうだが、慣れるととても簡単。電気の炊飯器なら1時間以上かかるのが、ものの20分あまりで炊き上がる。香ばしいおこげも混ぜ込んで熱々を召し上がれ。
続丹波包丁日記トップへ たんばぐみトップへ
丹波の食材はたんばるへ
米、黒豆、丹波山の芋、蜂蜜、佃煮、丹波栗、丹波茶 etc...