続 丹波包丁日記
〜 皐月鯉(さつきごい) 〜


 

 

 

 


写真・文章

丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
お店「茶寮ひさご」店主 真鍋馨様ご提供

 

 鯉は百魚の王にして、古来より第一位の魚として崇められる。鯛を魚の王様と思っている方もあろうと思うが、格でいえば鯉の方が上だ。鯉は生命力が強く、陸(おか)に上げてもしばらしくは生きているし、また口髭を蓄えた鷹揚な趣は大人(たいじん)の風格がある。

 鯉の滝上りという言葉があるが、これは、黄河の上流に「竜問」という急流があり、ここを上った鯉は竜になるといわれている。そのことから「登竜門」という言葉が生まれた。日本料理の世界では、伝統的な包丁式で神に奉げる肴は、鯉と鯛を使うが普通だが、ここまで鯉の方が鯛よりも上に扱われる。

 今の世は、川魚よりも海魚の方を食べる機会が多いので、一般には鯉を食べるという事は滅多に無いが、私が子どもの頃は、川で釣上げた鯉を鯉こくや飴焚きにしてよく食べたものだ。

 鯉は非常に栄養価の高い魚で、以前は、産後の肌立ちに良いものとして珍重された。中国料理でも鯉はよく使われる食材だが、日本料理では、鯉といえば、洗いに始まり、鯉こく、飴焚き、付け焼き、から揚げ、餡かけ、はては鯉のうろこの煎餅まである。昔はすき焼きにしてよく食べたと古老から聞いたことがある。

 ここ丹波の地ではなじみの深い魚だが、「皐月は鯉の吹流し」でこの風薫る季節に、一年に一度くらいは鯉を食べたいものだ。

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