続 丹波包丁日記
〜 鰻(うなぎ) 〜


 

 

 

 


写真・文章

丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
お店「茶寮ひさご」店主 真鍋馨様ご提供

 

 今年の夏は、土用の丑の日が二度あった。鰻にとっては、災難の日であることには違いない。

 土用の丑の日に鰻を食べるようになったのは、江戸時代になってからのことだが、万葉集では、大半の家持が「石麻呂に 吾もの申す 夏やせに良しというものぞ むなぎとりめせ」と詠っている。むなぎは、胸が黄色ということで、当時の鰻の呼び名。当時の人はすでに、鰻が夏バテに良いものということを知っていたのである。

  「蒲焼」は、焼いた姿が蒲の穂に似ていることからその名があり、当初は、鰻を筒きりにして、串に刺して味噌などを塗りつけて焼いていたと思われる。現在のように、鰻を開き、骨を除いてから付け焼きにする料理法になったのは、江戸時代後期のことらしい。また、蒲焼とよく似た語源のものに、「蒲鉾」があるが、これも、魚介類か鳥獣の身を竹に塗りつけて火にかざして焼いたもので、その名の通り当初は竹輪のような形をしていた。当初は竹輪が蒲鉾そのものだったのだ。それが蒲焼と同じように、料理技術が進歩して料理法が変わっても、元の名称はそのまま残ったのである。

 今の鰻は養殖物が主流。稀少な天然物は、鰻屋で食べると1匹1万円位の高値になり、おいそれとは口にできない。そこで養殖物に頼るしかないのだが、養殖物でも、今何とか問題になっている中国産でなしに、安全な国産物の鰻を仕入れ、夏でも冷たい地下水が流れる生簀か、清流に囲って、最低一週間は放し飼いにしたものではないといけない。こうすることで、余分な脂や養殖物独特のクセが抜け、脂肪過多の鰻は筋肉質のアスリートとなる。天然物や、このアスリートのうなぎ君は身が締っている分、余計な脂肪がないので、焼くと元の大きさの半分になぅてしまう。信用しない人もいるので、そういう方には目の前で最初から焼き上げて、養殖物との違いをお見せしたいくらいだ。しかしこのうなぎ君。半分になっても、味のほうは普通の養殖物に比べて2倍から3倍も良くなる。うちでは背から割いて白焼き後、一度蒸しを入れてからもう一度焼き上げる手間のかかる江戸焼きだが、身の締った鰻は、江戸焼きが向いている。一般の店では、ただ養殖物を下ろして焼くだけか、もっとひどいのは、業者が割いたうなぎを買い求めて、即製のたれで焼くだけのこまったお店も多くある。一般論ではないが、主に惣菜として売っている外国産の機械で焼き上げた鰻の蒲焼は、売値と利益ばかりを追求した工業製品のような鰻で、味のほうは本物の鰻とは比べ物にならない。悲しいことだが、本物のいい鰻を食べなれていると、一般の鰻がまったく食べれなくなってくる。

 総じて養殖物の鰻は、餌にする飼料などのクセがそのまま出てるので、そんな鰻を口にすると、味覚が拒絶反応を起こしてのどを通らないのである。鰻に限らず養殖物全般にいえることだが、一時、養殖の鰻は、鰻そのものの味よりも、飼料のイワシなどの味がするといわれたものである。自由競争の世界では、どうしても利益が優先されて、味や安全性は、置き去りになる傾向が強い。養殖の鰻も、天然物に劣らない品質のよいものを育てて供給してほしいものである。

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