今年も残り少なくなってきた。師走の「顔見世」は、十八代目「中村勘三郎」の襲名披露興行で盛り上がる。私は、暮の京都が大好き。四条大橋を行き交う人々のあわただしさと、やがて正月を迎える雅やかさが入り混じって、京のまちは何ともいえぬ穏やかな活気がある。京都には「顔見世講」という積立貯金のようなものが昔からあるらしい。顔見世見物のこの日ばかりは、一張羅の着物を着て出掛けるのであろう。
師走の京都で「美味しいもの」といえば、かぶら蒸し、芋棒、にしん蕎麦、かも南蛮、すっぽん鍋など例を挙げたらきりが無いが、今回は、今日の風物詩「温(ぬく)寿司」を紹介する。これはうちの店でも寒中によく出す料理
。
寒くなると京のすし屋では、甘酸っぱい蒸し寿司を店頭の大きな蒸籠で蒸し揚げる。温寿司とは、どんぶりに酢飯を盛り、松茸や錦糸卵に焼き穴子や海老などの具を載せて蒸したもの。蒸したての温寿司を、客が出入りする度に隙間風が入るような気取り無い店で、馴染客の生活感のある京言葉聞きながら、ふうふういって食べるのはなかなかのものである。この温寿司をご家族でも一度作られてはいかが。
作り方はいたって簡単。まず、甘めの巣飯を合わして暖かいうちに好みのどんぶりか鉢に盛る。上にたっぷりの具が乗るので巣飯の量はほどほどに。次に、御飯の上に砂糖と醤油で甘く炊いた椎茸や高野豆腐、かんひょうなどを細かく切って乗せる。ばら寿司のように巣飯に混ぜ込んでもよい。その上に錦糸玉子を乗せて焼き穴子や海老、三つ葉などを乗せて蒸し器で蒸すと出来上がり。いってみれば、蒸した散らし寿司のようなもの。京都人は華やかに見えて実は節約家。本当のところは、冷たくなった昨日のばら寿司を再利用する生活の知恵だったのかもしれない。
また京都や、この丹波は、固くなった鯖寿司を火鉢の上で両面をこんがりと焼いて暖めなおして食べることがある。鯖の脂身が滲み出て、これはこれで充分に美味しい。鯖の表面をバーナーで焼いただけの、今はやりの「焼鯖の棒寿司」とは別趣のもので、家庭版の焼いた「鯖の棒寿司」ともいえるが、ルーツとしてはこの方が古いかもしれない。
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