日本料理で、有馬煮、鞍馬煮といえば山椒で炊いた料理のこと。いずれも山椒の産地の名が付いている。例えば鮎の有馬煮は、鮎を実山椒で煮たもので、山椒を加えることによりインパクトの強い料理になる。
丹波も、有馬や鞍馬に劣らずあちらこちらに山椒の木がある。山の山椒は良いというが、枝には鋭い棘があるので、若い木の芽だけをむしり取るのは大変な労力だ。
ところで日本料理に使う擂粉木は、山椒の木を用いたものが最良。一般の白木のものより山椒の木で作ったもののほうがはるかに高価だが、硬くて握りやすい上に、山椒の木そのものに防腐作用があるらしい。
山椒は、日本料理とは深い関わりがあり、春の若い木の芽から始まり、花山椒、やがて緑色の実をつけた実山椒になり、その実は夏を越し、秋になると茶色に枯れた実が三方にはじける。それを「割山椒」と呼ぶ。昔より陶磁器の中でも割山椒の向付といえば、ことさら品格の高いものである。「魯山人」の焼締の割山椒の器に、天然鯛の「細造り」か「そぎ造り」を盛って、今の時季なら酢橘の割り醤油を刺身の脇に垂らして供せば誰も文句を言うまい。渋めの徳利で程よく燗した好みの純米酒を「魯山人」か「須田青華」の赤絵の馬上杯で一献やれば、愉快、愉快。まるで雲の上を歩いているような気分になるのではないか。
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